ほるみしす。

大学4年次から大学院修士課程修了までの3年間、私の研究テーマは「放射線のホルミシス効果」でした。放射線と言うと恐ろしげなイメージが付き物ですが、実は放射線というものは常に私達の頭の上から降って来ています。“宇宙線”と呼ばれるもので、どこにいても私たちは放射線と無縁には生きていません。ホルミシス効果というのは毒性を持つ物質がごく微量生き物に与えられた時、その生き物に有益な効果が現れる現象の事です。例えば、ジギタリスという植物をご存知でしょうか。心臓病の薬として使われて来た植物ですが、用量を間違えると激しい下痢や嘔吐を引き起こします。スズラン、フクジュソウ、オモトなどもよく似た成分を持っている事で知られています。
私が線源として使っていたのはコバルト60という強力なガンマ線源です。放射線には様々な種類があってそれぞれ性質が違います。アルファ線は紙1枚を透過する事が出来ませんが、ガンマ線はコンクリートでも突き抜ける事が出来ます。ごく微量のガンマ線が生物の細胞を透過した時、その生物の生涯にどんな効果が現れるのか？私は比較的寿命の短いネズミを選択し、血液から得られる様々なデータを追跡していました。
一連の実験の結果、ごく微量のガンマ線に被曝したネズミは通常のネズミより長生きである事、免疫をコントロールする血中タンパク質に変化が現れる事が解りました。放射線にもホルミシス効果は存在したのです。
私の得たデータはあくまでネズミのデータです。だから人間でも同じ事が言えるかどうかは残念ながら保証出来ません。
昨今原発事故の影響で、福島県が大変な風評被害に見舞われていると耳にします。福島県の皆様方には頑張っていただきたいものだと思います。