スクランプ連盟

趣味の旅行、映画、パートナーと二人三脚のうつ病ライフについてゆるーく書いてます。

ますく。

パートナーがちくちくちくちく手作りマスクを縫っています。もうすぐうちの使い捨てマスクの在庫が切れるので、パートナーがどこかから医療用ガーゼをいっぱい買ってきました。私が通う病院はどこもマスクなしではドアも開けさせてもらえないほどコロナ対策に敏感なので、使い捨てマスクがなくなったらとても困ります。

パートナーの姉、私にとってはお義姉さんですが、洋裁教師の免許を取るほど手先が器用で、自分のウェディングドレスを自分で作っちゃうほどの凄腕だったりします。パートナーも器用さでは負けず劣らず、ミシンなんか使ったらせっかくのガーゼが傷んじゃうよ、と言ってひと針ひと針丁寧に、それこそ愛情込めて縁はかがり縫い、ゴムのところは返し縫いしています。手伝おうかと言っても、あなたは仕事が雑だから、と任せてくれません。何度も洗って使うことを考えたら適当に縫ってはいけないのだそうです。

昔々私たちが学生だった頃、実験動物に均等な量の薬を飲ませるための「ゾンデ」という器具があったのですが、パートナーはゾンデ使いの達人でした。実験動物の体をまっすぐに伸ばし、口からのどにかけてを一直線にして胃に直接薬を投与するのですけれど、下手なひとがやると動物が苦しがって暴れてしまい、悪くすると肺や食道を傷つけて死なせてしまいます。パートナーは実験動物がびっくりしている間に手際よく、次から次へと薬を飲ませていきました。その手元の美しいことといったらありませんでした。私はゾンデを使わない実験をしていましたが、いつも彼の仕事に見とれていました。迷いも無駄もない、職人のような仕事。

あれから何年も経って、今では器具を針と糸に持ち替えて、丁寧で繊細な指先で私たちをコロナウィルスの脅威から守るためのマスクを作っています。ひとつ出来上がるごとに私につけさせて、苦しくならないか、耳は痛くならないかを確かめさせます。私が大丈夫と言ったら最終完成。手仕事なので量産はききませんが、忙しい仕事の合間を見つけて大事に縫われたマスクはシンプルで機能的で、そしてとても美しいです。

このひとを私にくださった存在に、どうか世界中のひとが苦しんでいるこの不幸から、彼だけは守ってくださいと身勝手なお願いをしています。