スクランプ連盟

趣味の旅行、映画、パートナーと二人三脚のうつ病ライフについてゆるーく書いてます。

えいが。

終の信託”見て来ました。テレビCMの告知で“ラブストーリー”だと言われていたので、冒頭主人公の医師がいきなりベッドシーンから回想を始めたのを見て、ひょっとしてドロドロ愛憎劇?とかなりびっくりしましたが、話が進むにつれてああ、なるほど…と納得させられました。この作品は確かに純粋なラブストーリーだな、と。
遊ばれて捨てられて自殺未遂を起こしたエリート医師。彼女の心にそっと手を差し伸べた穏やかな語り口の担当患者。ふたりの気持ちが医師と患者の関係を超えて静かにつながりゆくのが見えました。“特別”だったからこそ患者は医師に自分の最期を託し、医師は患者に“あなたがいなくなったら私どうしていいか解らない”と告げる…。何とも痛ましい愛のかたちです。
私はかつて喘息患者でした。映画に出て来る薬はどれもよく知っているものばかり。患者役の役所広司さんは喘息の症状をとてもよく研究している様子で、発作のシーンはおそろしくリアルでした。苦しいね、つらいね、と涙が止まらなくなりました。私が医師で、愛するひとが目の前であんな風に苦しんでいたら多分治療どころではないでしょう。最後の入院で、意識がないはずの彼の栄養チューブにストレス性胃潰瘍の徴候を見たら、私も医師と同じ決断をしたと思います。作品を御覧になった方の為に、医師が点滴に入れた薬についてちょっと書きますが、セルシンはうつの患者にもよく使われる精神安定剤、ドリミカムは麻酔薬です。楽にしてあげたかった気持ちがどれ程のものか、いくらかお解りになるかと思います。
医師は罪に問われます。検事は患者の命を救う事が医師の役割だ、と言いますが、彼女は患者を幸せにする事が医師の仕事だ、と答えます。どちらも間違いではありません。ひとの命はかけがえのないものだから、尊ばれなければならないという点では両方正解です。でもひとりの人間として究極の愛を貫いた彼女を法律は裁けるのでしょうか…。ちょっと重いテーマの作品ですが、見応えは充分です。