スクランプ連盟

趣味の旅行、映画、パートナーと二人三脚のうつ病ライフについてゆるーく書いてます。

ひとこと。

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重い拒食症を患った友人がいました。出会った当時は身長160センチくらい、体重は32、3キロくらいだったと記憶しています。足が私の腕より細く、何枚も重ねた厚手のストッキングがだぶついていました。体脂肪が少な過ぎて体温調節が利かない為、授業中もコートを着込んだままでした。
私は中学生の時大きな病気をした為に、体育の授業にドクターストップがかかっていました。常に見学組だった私達が仲良くなるのにそう時間はかかりませんでした。
彼女は読書が趣味で、“赤毛のアン”が殊に好きでした。いつかプリンスエドワード島に行ってアンの家をこの目で見てみたい、と目をきらきらさせて話してくれました。当時の私は日本文学に傾倒していたので、彼女の話はいい刺激になりました。拒食の方は治まっていたのですが、人間は1度限界を超えると太りたくても太れなくなるのだそうで、アルバイト先のパン屋さんで売れ残った菓子パンやケーキを常に口にしつついつか40キロ台まで体重を戻したい、と必死に頑張っていました。
ある時、中学時代からの友人から忠告を受けました。当時私の居た学校では盗難事件が多発していて、現金や古本屋に高価で売れる辞書が頻繁に無くなっているという問題があったのですが、その犯人と目されているのが彼女だというのです。あろう事か、共犯として私の名前も囁かれていると。確かに体育の授業の時、コートやカイロを取りに教室に戻る彼女に付いていく事はよくありました。でも他人のものを盗るなんてとんでもない事です。悪い事は言わないから距離を置いた方がいい、とその友人は言いました。あなたがそんな人間じゃない事は解っているから、と。
悩みに悩んだ末、私は友人の忠告に従って彼女といくらか離れて過ごすようになりました。外見や心ない噂から彼女を判断したクラスメイト達は彼女に近づこうとせず、彼女はひとりになりました。
その年の冬、彼女は転校していきました。
私は彼女に「信じている」のひとことが言えなかった事を今でも悔いています。