スクランプ連盟

趣味の旅行、映画、パートナーと二人三脚のうつ病ライフについてゆるーく書いてます。

えいが。

ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館”見て来ました。タイトル見て首をひねった方も多いかと思います。単館上映とか自主製作映画じゃないですよ。同日公開の“007 スカイフォール”の前評判に隠れてほとんど知名度がないのですが、映画好きならぜひ押さえておきたい作品だと私は思います。ジェームス・ボンドよりこちらを見るべき!…ファンの方にお叱りをいただきそうですね。
と言うのもこの映画、主演はダニエル・ラドクリフさん。ハリー・ポッター後の初主演作なのです。彼ほどのビッグネームが人気子役から本格俳優としての転換に挑んだ非常に興味深い作品なのに、何で話題にならないんでしょう?作品自体が面白くないのかというと全くそんな事はないです。原作は30年前にイギリスでベストセラーになった人気小説だそうですよ。
感想ですが、久し振りに上質なホラーを見たな、という印象。これは私の勝手な持論なのですが、“ホラー”とひと括りにされる作品の中には、“恐い”と感じるものと“不快”と感じるものの2種類があると思うのです。残虐シーンや死体の数が多ければいいってものじゃないと思うんですよね、ひとを恐がらせるのに必要な要素って。観客がスクリーンから目を背けるのは多かれ少なかれ“気持ち悪い”からだ、と気付いていない作り手さんって結構多いなあ、と感じています。この作品、ひとは死にますが描写が割にソフトです。絶叫シーンはひとつもありません。
じゃ何が“恐い”のか、というと、実はこの作品、半分くらいはラドクリフさん演じる弁護士アーサー・キップスのひとり芝居なんですが、彼の心の動きが手に取るように解るんですよ。作り手の見せ方の巧さもさることながら、やはりラドクリフさんの表現力はたいしたものです。説明的なセリフがなくとも疑問から驚きへ、恐怖へ、焦りへ、そして終局へと続いていく感情の揺らぎが観客の心の中にすっと入って来る感じですね。そもそもキップスという人物はうつ病寸前のつらい思いを抱えていて、それがピアノの重低音のように作中を暗ーく流れて行くのですが、他の俳優さんが演じていたらこの何とも言えない空気感、伝わるだろうか?と思いました。
この映画はイギリス版の“リング”だと思います。相当にジャパニーズ・ホラーを意識して作られた感がありました。日本映画も世界に実力を認められつつあるんだな、と映画ファンとしては感慨深いものがありました。と同時に、ダニエル・ラドクリフはもはやハリーではない、と実感出来たところもまた然り、です。