スクランプ連盟

趣味の旅行、映画、パートナーと二人三脚のうつ病ライフについてゆるーく書いてます。

えいが。

“少年H”見て来ました。正直私この作品にはあまり期待していませんでした。主要な制作スタッフの中に主演の水谷豊さんの代表作“相棒”シリーズに携わった方がとても多くて、あ、これは水谷さん推しの映画だわ、しかも女房役にリアル奥さん持ってきてるし露骨だなあ、と。この作品がモスクワ国際映画祭で特別作品賞を受賞した事を知らなかったらスル−していたかもしれません。
お手並み拝見、と劇場に行ったわけですが、上映後にエンドロールを眺めながら自分の偏見を大変に恥じました。水谷さんはいい役者さんです、間違いないです。彼はセリフがなくとも演技が出来るなかなかいない俳優さんのひとりですね。
彼の演じる父親像は時代背景を考えるとかなり変わった感じがしました。家父長制の時代に父親が子供と対等の目線で話すなんて事はあり得ない、といった半ナマの思い込みが私の中にあったからですが、話が進むにつれてだんだん見えてきました。このお父さん、自分に自信がないんじゃないかな?仕事上外国人との付き合いがありかつクリスチャンである事でスパイの嫌疑をかけられたり、兵役を丙種という事で免除されたり、少なくともご近所にはさぞや肩身が狭かろう、と。だから家族の前では精一杯いい父親であろうと頑張ってるんじゃないかな?と。画面からひしひしと伝わる何かがあるんです。
だから戦争が終わって世の中が変わってしまって、自分を支えてきた“頑張る”という心の糸がぷっつり切れてしまった時、何のためにも頑張れなくなってしまった。…文章にするとどうも説明臭くていけません。語彙貧困で申し訳無いんですけど、水谷さんの演技を見ていて言外の言とでも言いますか、感じるものがありました。で、モスクワ映画祭で評価されたのはまさにここなんじゃないだろうかと思いました。
水谷豊は杉下右京のみにあらず!です。流行りの作品で波に乗ってる役者さん、程度にしか彼を評価していなかった私は大馬鹿者だと反省する事しきりです。