スクランプ連盟

趣味の旅行、映画、パートナーと二人三脚のうつ病ライフについてゆるーく書いてます。

えいが。

怒り観てきました。この映画は公開前からキャスティングのすばらしさに魅了されていました。原作は新聞に連載されていたそうですが、残念ながら私は読んだことがありません。ただ、出来上がった映画を観てこのキャスティングは他をもって代え難い最高の布陣かもしれないと思いました。例えば宮崎あおいさんは今作のために7kg体重を増やしていますし、原日出子さんはがんで亡くなる役なので逆に水だけダイエットで10kg減らして撮影に臨んでいます。まさに役者根性だと思います。
俳優さんにそれほどの入れ込みをさせただけあって、ストーリーの方も素晴らしい出来でした。この物語は東京・千葉・沖縄で、互いに知り合うことのない別々の人生が三者三様に流れて行くちょっと変わった構成を取っています。この3組の異なる人生の唯一の接点は、1年前に八王子で起こった殺人事件の犯人の似顔絵です。「自分の大切なひとが殺人犯かもしれない」という恐ろしい疑念にそれぞれの登場人物はさいなまれていきます。タイトルの「怒り」は単にストーリーをつなぐ象徴的なキーワードであるだけでなく、大切なひとを信じられないことイコール自分自身を信じられないことに対する深い絶望と悲哀を表す言葉ではないかと感じました。
3つのストーリーの人物達は深い傷を背負って生きていくことになります。沖縄編の主人公が海に向かって胸を揺すぶるような激しい絶叫を響かせた時、彼女のやり場のない心のうちと、逆にそこから立ち上がって歩いていこうとする強い意志が見えた気がしました。千葉編と東京編もこれから手探りで懸命に幸せを探していくのでしょう。胸が熱くなりました。さすがは李相日監督、今回も素晴らしい仕事です。