スクランプ連盟

趣味の旅行、映画、パートナーと二人三脚のうつ病ライフについてゆるーく書いてます。

えいが。

傷物語Ⅲ観てきました。このシリーズはⅠが全然わからなくて、Ⅱでようやく話の筋をつかんで、Ⅲを2回観てやっと涙が出ました。Ⅲを2回観たのはⅠで恥も外聞もなく命乞いをしたキスショットがなぜ暦のために死のうとしたのかが1回目では飲み込めなかったからです。もともとキスショットは吸血鬼になってから誰かに優しくされたことがなかったんですね。彼女は3人のヴァンパイア・ハンターに両手両足を奪われた時、500年生きてきた自分が消えてしまうのが恐かった、と言っていました。ただ、命乞いはしたものの助けてもらえるとは思っていなかったんだと思います。いわば「ダメもと」です。でも暦は助けてくれた。それはキスショットにとって初めての経験だったわけです。だから本来なら血を吸い尽くすはずのところをそうしないで、眷属として生かしたんです。キスショットは初めから自分を助けてくれた暦に報いるつもりでいた、つまり、暦に自らを殺させることで人間に戻ってもらうつもりでいました。ただ、そうするためにはフルスペックの自分を殺してもらう必要があったから、暦に3人のヴァンパイア・ハンターを倒して両手両足を取り戻してもらわないといけなかったわけです。
さて、ではなぜ予定になかったキスショットの心臓を忍野メメが持っていたのかというと、キスショットとメメの間には暗黙の了解があったからです。すなわち、メメにとって世界のバランスを保つという目的のためにはキスショットに死んでもらう方が都合がよかったから、ですかね。ある意味メメには暦という存在は予定外だったんでしょう。キスショットが暦のために死のうとしていることに気付いたから、暦に心臓をすんなり返したんです。
でも暦はキスショットの覚悟を知らなかった。だから吸血鬼としての彼女が「人間を食べる」という事実に直面した時自分が何を助けたのかを知って混乱してしまいます。キスショットは生きている限り人間を食べ続ける。暦は人類の敵になってしまったわけです。ならば自分が死んで落とし前を付けるのか、キスショットを殺すのか。暦はフルスペックになったキスショットを自分が殺せるとは思っていません。そこで登場するのが羽川です。羽川は暦の背中を押します。キスショットと戦うようにと。
最後の戦いの時、羽川はキスショットが自ら死のうとしていることに気付き、それを暦に伝えます。暦は凄惨な戦いの末、キスショットが死ぬぎりぎりのところまで血を吸うことに成功します。もはや無力化したキスショットを前にして、暦はメメを呼びます。メメは事態を見届けるためにそばにいるはずだから。案の定現れたメメに、暦はみんながハッピーになるためにはどうしたらいいかを問いますが、メメは誰も救われない方法ならある、と言います。暦が人間に戻ることを諦めて、「限りなく人間に近い吸血鬼」に甘んじること、キスショットが飢えないように一生暦の血を与え続けること、人間はキスショットという存在を残しておくことで吸血鬼の復活というリスクを背負うこと。誰も幸せにはなれません。暦とキスショットはお互いの傷をなめ合って生きていかなければなりません。絶望的な、悲しい傷の物語です。